従業員が業務中に怪我や病気になった際などに適用される「労災保険」。しかし、就労継続支援B型の利用者は工賃をもらいながら働くものの、雇用契約を結びません。そのため、「従業員と同じように労災保険は適用されるのか」と疑問に思う開業者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は就労継続支援B型の利用者が労災保険の対象になるのか、その根拠と将来性について紹介します。
就労継続支援B型の利用者は労災保険の対象になる?
結論から言うと、就労継続支援B型の利用者は労災保険の対象になりません。雇用契約を結ばない就労継続支援B型では、利用者は「訓練生」の扱いとなり、労働基準法をはじめとした労働関係の法規は適用されないからです。
なお、就労継続支援A型の利用者は雇用契約を結ぶため、「労働者」の扱いとなり、労災保険も適用されます。
就労継続支援B型と「労災保険」将来的には適用される?
2022年3月時点で、就労継続支援B型の利用者は労災保険の適用外ですが、この状態を疑問視する声があります。
例えば、国連・障がい者権利条約第27条では「あらゆる形態の雇用にかかる『全ての事項』に関し、障がいに基づく差別を禁止すること」としています。これを受けて、「あらゆる形態」には、就労継続支援B型のような福祉的就労も含むべきではないかという声が少なくありません。
なお、第27条における「全ての事項」とは、主に次の4つを含みます。
- 募集
- 採用および雇用の条件
- 雇用の継続
- 昇進ならびに安全かつ健康的な作業条件 など
また、全国福祉保育労働組合の報告書では「授産施設における障がい者が行う作業を、妥当な範囲で労働法の範囲内に収めることは、極めて重要であろうと思われる」と述べているところも。さらに、全国社会就労センター協議会は「福祉的就労で働く障がい者向けの労災補償保険に順ずる制度を設けることが必要」としています。
以上から、就労継続支援B型の利用者も労働法規の適用対象とし、労災保険やそれに順ずる制度の確立が必要であることを求める声が多く、将来的に何らかの変更がなされることが期待されています。
まとめ
就労継続支援B型の利用者は2022年3月時点で、労災保険の対象とはなりません。しかし、将来的には制度改正により、労災保険の対象となる可能性もあります。利用者の労働環境や賃金などでお悩みの方は、就労継続支援B型に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献