生活介護をはじめとする障がい福祉サービスでは、事業情報などを都道府県に報告する「情報公共制度」が設けられています。令和6年度の報酬改定では、当該制度への対応が不十分な場合に適用となる減算が新設され、開業者・事業者の対応が待ったなしの状態です。
そこで今回は情報公表制度の基礎知識を踏まえながら、未報告減算の適用条件や減算率などを紹介します。
障がい福祉サービスの情報公表制度とは?
生活介護をはじめとする障がい福祉サービスは、以下を目的として事業所の情報を都道府県等へ報告・公表するよう定められています(障がい者総合支援法第76条の3より)。
- 利用者が良質なサービスを選択できる
- サービスの質を向上させる
- 災害発生時に迅速な情報共有ができる
- 財務状況の見える化を推進させる
都道府県等に報告する情報の例は、下表のとおりです。
報告内容の例 | |
基本情報 | ・事業所等の所在地
・従業員数 ・営業時間 ・事業内容 など |
運営情報(具体的な取り組みの状況) | ・関係機関との連携
・苦情対応の状況 ・安全管理等の取り組み状況 など |
都道府県が必要と認める事項 | 各都道府県によって異なる |
同制度は平成30年4月に施行となりましたが、令和6年度の報酬改定ではさらに一歩踏み込み、未公表の事業所には減算が適用されることとなりました。
生活介護の情報公表未報告減算とは?
同減算の適用条件や減算率は、それぞれ以下のとおりです。
適用条件
同減算は、障がい者総合支援法第76条の3に基づく事業情報の報告・公表がされていない場合に適用されます。
都道府県は、事業所の指定更新時に報告の有無を確認します。そのため、遅くとも指定の更新申請前には情報公表にかかる報告を済ませておくことが必要です。
減算率
同減算の減算率は95%、つまり基本報酬が従来のマイナス5%で計算されます。たとえば、以下の条件で減算が発生した場合にどれほど減額されるかシミュレーションしてみましょう。
- 利用定員:20名(計算しやすいよう、すべて区分4とする)
- 利用回数:3回/週、12回/月
- 基本報酬:584単位(7時間以上8時間未満)
- 減算の適用期間:3か月
【従来の基本報酬】
報酬単価×人数×回数×地域区分(10円)
=584単位×20名×12回×3か月×10円
=4,204,800円
【減算適用】
基本報酬×95%
=4,204,800円×0.95
=3,994,560円
つまり、約21万円の差額が発生します。ほかの減算よりも減算率が高く、減額される金額も大きくなるため、未報告の場合は早めに対応しましょう。
まとめ
生活介護の情報公表にかかる報告は減算を避けるだけではなく、事業所の信頼感を高め集客率を向上させるうえでも重要です。開業準備や運営でお悩みの方は、生活介護に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献