就労移行支援では、利用者に対して不適切な身体拘束をおこなうと減算の対象になります。しかし「どこまでが身体拘束にあたるのか」「対策として何をすべきか」といった疑問を持つ開業者も多いでしょう。
そこで今回は身体拘束の基礎知識を踏まえながら、減算の適用条件や注意点などを紹介します。
身体拘束とは
身体拘束とは動きを抑制・停止させるために、本人の意思にかかわらず行動の自由を奪う行為を指します。身体拘束に当てはまる具体的な行為は、以下のとおりです。
- ひもや抑制帯・安全ベルト
- ミトン型の手袋
- 体を使った抑えつけ
- 向精神病薬の過剰服用
- 自分の意志では出られない部屋への隔離 など
就労移行支援の利用者は、比較的障がいの程度が軽い人が多いため身体拘束の対象にはなりにくいことが一般的です。しかし、車いすベルトや向精神薬の使用は発生頻度がやや高いため、無意識下で身体拘束を実施しないよう理解を深めておく必要があります。
就労移行支援の身体拘束廃止未実施減算とは
ここでは、身体拘束廃止未実施減算の適用条件と減算率を見ていきましょう。
適用条件
当減算は以下の4つの要件のうち、いずれかを怠った場合に減算となります。
- やむを得ず身体拘束をおこなう場合の記録
- 身体拘束の方法や時間
- 利用者の心身状態
- やむを得ない理由
- その他必要な事項
- 適正化に向けた委員会の定期的な開催と周知徹底
- 適正化に向けた指針の整備
- 従業員への定期的な研修
これまでの適用条件は1のみでしたが、令和3年4月に2〜4が新規で追加されました。その後、経過措置の期間を経て令和5年4月から義務化されています。
減算率
当減算の減算率は5単位/日であり、利用者全員の基本報酬から差し引かれます。減算される期間は、適用された月の翌月から改善が認められた月までの間です。
身体拘束廃止未実施減算されないための取り組みと注意点
就労移行支援で当減算を適用されないための取り組みは、主に以下の3つです。
- 「客観的に見て身体拘束や虐待にあたるか」を中心に考える
- 減算時は都道府県知事へ、改善計画の提出と3か月後の改善状況を報告する
- やむを得ず身体拘束するときのルールや適正化に向けた対応などを明記する
利用者への身体拘束はできる限り避けるのはもちろん、適正化に向けて事業者・従業員一同、意識改革することが大切です。
まとめ
身体拘束廃止未実施減算では、令和5年4月から適正化に向けた取り組みが義務化されています。収益減を防ぐためにも当減算が適用されないよう、身体拘束について事業所全体へ周知徹底していくことが必要です。
経営や運営でお悩みの方は、就労移行支援に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献