やむをえない場合をのぞき、廃止が望まれている利用者への「身体拘束」。介護報酬では身体拘束廃止未実施減算が設けられ、令和4年度からは各種条件の義務化が定められています。
そこで今回は、障がい者グループホームの身体拘束廃止未実施減算について、身体拘束の基礎知識を踏まえた上で減算条件などを紹介します。
障がい者グループホームで行われる可能性がある身体拘束とは
身体拘束とは、「経管栄養のチューブを抜かないようにミトンを装着させる」「落ち着かないからと部屋へ隔離して施錠する」など、利用者の動きを制限するものです。身体拘束は利用者へ多大なストレスを与えるだけでなく、人権侵害にもなるため、次のような原則が設けられています。
やむをえず身体拘束する際の3原則
身体拘束は、「切迫性」「非代替性」「一時性」という3原則をすべて満たす場合にのみ可能。それぞれの意味合いは、次のとおりです。
切迫性:利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
やむをえず身体拘束する際の手続き
3原則を全て満たし、やむをえず身体拘束をする場合には、次のような手続きを行いましょう。
①施設全体での検討・決定
②個別支援計画への記載
③家族への説明・同意
④身体拘束を実施した際の記録
障がい者グループホームの身体拘束廃止未実施減算
やむをえず身体拘束をする場合の記録がきちんとされていなかった場合、「5単位/日」の減算が適用されます。詳しい減算要件は、次のとおりです。
身体拘束廃止未実施減算の要件
下記のいずれか1つにでも満たしていなければ、減算となります。また、②~③は令和3年度は努力義務化ですが、令和4年度から義務化となっている点にも注意です。
①身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録すること。
②身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
③身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。
④従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
身体拘束廃止未実施減算の手続き
身体拘束廃止未実施減算が適用される場合、次のような手続きを順次済ませましょう。
①身体拘束に関する記録の不備について、改善計画を都道府県知事等へ提出
②身体拘束をした月から3か月後、改善状況を都道府県知事等へ報告
③身体拘束をした月の翌月から改善が認められた月の報酬額を減算(利用者全員分)
まとめ
身体拘束廃止の動きは、年々大きくなってきています。障がい者グループホームも例に漏れません。身体拘束や減算についてお悩みの方は、障がい者グループホームに強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献