就労継続支援B型の主な収入源のひとつが、国から支給される報酬です。とくに、生産活動からの収益が安定しない開業直後は、なるべく減算されたくないところ。しかし、中には「気づかないうちに減算対象になっていた」というケースもあります。その例が、身体拘束廃止未実施減算です。
今回は、就労継続支援B型が対象となりうる身体拘束廃止未実施減算について、その概要や適用例を紹介します。
就労継続支援B型の身体拘束廃止未実施減算とは
身体拘束廃止未実施減算の適用要件や、減算率をそれぞれ見ていきましょう。
減算の要件
身体拘束廃止未実施減算の適用要件は、次のとおりです。
- 身体拘束等を行っているにもかかわらず、次のような必要事項を記録していない場合
- 身体拘束の実施方法や時間
- 利用者の心身の状況
- 緊急やむを得ない理由
- その他必要な事項
- 身体拘束廃止に向けた対策を検討する委員会を定期的に開催していない
- 身体拘束等廃止に向けた指針を整備していない
- 従業者に対し、身体拘束廃止に関する研修を定期的に実施していない
このうち、1つでも当てはまると減算対象となりますが、2.~4.の要件が適用されるのは令和5年4月からです。また、努力義務から義務化へ移行している要件もあるため、既存の事業所も要件を再確認しておくとよいでしょう。
減算率
身体拘束廃止未実施減算が適用される場合、利用者全員の基本報酬が「5単位/日」ずつ減算されます。減算期間は、身体拘束をした月から改善が認められる月までの間です。
また、減算が適用される場合は改善計画を都道府県知事へ提出し、3か月後に改善状況を報告する必要があります。
就労継続支援B型で身体拘束?実際にあったケースを紹介
障がい福祉サービスの中でも、比較的動ける方が対象となる就労継続支援B型。そのため、身体拘束のイメージがわきにくい事業者も多いのではないでしょうか。
実際、就労継続支援B型で身体拘束廃止未実施減算が適用されているのは、全体の0.06%といわれています。とはいえ、ゼロではありません。厚生労働省の調査によると、就労継続支援B型で減算対象となったケースとしては、次のようなものが挙げられます。
減算の適用期間 | 3か月 |
減算対象と判明した経緯 | 実地指導 |
身体拘束の内容 | 車いすベルトの使用 |
事業所への指導内容 |
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事業所の対応 |
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車いすベルトは、転落防止策として利用している事業所も少なくありません。今後は、記録や研修の実施などの要件を守らないと減算対象になります。これを機会に、全利用者の身体拘束について振り返ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
身体拘束廃止未実施減算は、就労継続支援B型でも減算対象になり得ます。経営や加算の算定などでお悩みの方は、就労継続支援B型に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献