障がい者グループホームの運営者にとって、トラブルの発生はできるだけ避けたいもの。しかし、入所者はさまざまな性格や障がい特性を持った方であるため、トラブルを完全に防ぐということはできません。
時には、暴力によって職員が怪我を負うということもあるでしょう。業務中の怪我ともなれば、「労災(労働災害)」として認定される可能性もあります。
そこで今回は、労災の基礎知識を振り返りながら、障がい者グループホームで労災になりうるケースを紹介します。
労災・労災保険とは
「労災」とは、業務中・通勤途中などで、怪我や病気になることを指します。その際、従業員の治療費や働けない間の生活費を補償するのが「労災保険」です。労災保険は通常の保険と異なり、個人ではなく企業が加入します。
労災の認定基準
労災のうち、仕事が原因の場合は「業務災害」や「複数業務要因災害」、通勤が原因の場合は「通勤災害」として労災保険の給付を受けられます。それぞれ労災に該当する要件が細かく定められているため、詳しくは厚生労働省のパンフレットをご覧ください。
労災保険が対象とする補償
労災保険で受けられる補償は、次の8つです。なお、業務災害は「〇〇補償給付」、通勤災害は「〇〇給付」と若干名称が異なります。
- 療養(補償)給付:入院や治療、通院費などへの補償
- 休業(補償)給付:働けない期間の賃金補償
- 傷病(補償)給付:1年6か月経過しても、怪我や病気が継続している場合の補償
- 障害(補償)給付:身体障がいが残る場合の補償
- 介護(補償)給付:介護を受けている場合の補償(補償年金や等級などの条件あり)
- 遺族(補償)給付:従業員が志望した場合、遺族に給付される補償
- 葬祭料・葬祭給付:死亡した労働者の葬祭に関する費用の補償
- 二次健康診断等給付:二次健康診断の受診費などの給付(一定の条件あり)
障がい者グループホームで労災になりうるケース
中央労働災害防止協会によると、障がい者グループホームをはじめとする社会福祉施設の労災の種類は、主に次の3つが挙げられます。
- 1位:腰痛などの、動作の反動・無理な動作(34%)
- 2位:転倒(33%)
- 3位交通事故、墜落・転落(6%)
これ以外にも、利用者から暴力を受けて怪我をした場合、労災認定される可能性も。怪我の原因は利用者であっても、障がいによって責任能力がないと判断されると、管理監督する事業所が責任を取ることになるからです。
いずれにおいても、日頃から職員と密にコミュニケーションを取り、危険な場面や場所がないか確認し、早めに予防策を講じるようにすることが大切です。
まとめ
人対人の仕事が多い障がい者グループホームでは、労災が発生する可能性がゼロとは言い切れません。不測の事態を避けるためにも、運営者は日頃から現場の意見を聞き、予防策を講じる必要があります。労災や運営についてお悩みの方は、障がい者グループホームに強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献