障がい者グループホーム(共同生活援助)の「常勤換算」基本的な考え方と計算方法
障がい福祉サービスにおける「常勤換算」とは
障がい福祉サービスの人員配置基準を考えるとき、切っても切り離せないのが「常勤換算」という考え方です。障がい者グループホーム(共同生活援助)も、生活支援員や世話人の人員配置基準において常勤換算を用います。
そこで今回は、障がい者グループホームの常勤換算について、具体的な計算方法や報酬改定の最新情報を紹介。「常勤換算って、いまいちよく分からない…」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
常勤換算の計算方法
常勤換算とは、職員の勤務時間が「常勤職員の何人分に相当するか」を計算するもの。具体的な計算式は、次のとおりです。
(職員の勤務時間×人数)÷常勤職員の勤務時間=常勤換算
例えば「常勤職員の勤務時間が8時間の事業で、4時間勤務のパート職員が4人いる」場合には次のような計算となります。(4時間×4人)÷8時間=常勤換算2.0人
また、1人の非常勤職員が「常勤換算で何人分に相当するか」を計算する場合は、次の計算式から算出可能です。
非常勤職員の勤務時間÷常勤職員の勤務時間=常勤換算
こちらも例を挙げてみましょう。「常勤職員の勤務時間が8時間、非常勤職員の勤務時間が4時間の場合」には、次のような計算となります。
4時間÷8時間=常勤換算0.5人
どこから常勤?非常勤?
常勤換算を計算する以前に、「この職員は常勤なのか、非常勤なのか…?」と分かりにくい場合も少なくありません。実は、職員の常勤・非常勤の区別は、事業所のフルタイム勤務時間によって異なってきます。
例えば、事業所のフルタイム勤務時間が週40時間の場合。週30時間働く職員は、正社員だとしても「非常勤」となります。ただし、事業所の常勤時間数が週32時間を下回る場合には、週32時間を基準として判断します。
有給や出張のときには
有給取得時や出張時には、当人が「常勤者かどうか」で常勤換算の人数に含めるか否かが変わってきます。
当人が常勤であれば、常勤換算の人数に含むことが可能。一方、非常勤の職員は有給時などに常勤換算することはできません。
ただし、常勤職員であっても、カレンダー上で1か月を超えた出張時や産休・育休時などは含まれないため、注意が必要です。
障がい者グループホームの常勤換算
障がい者グループホームでは、世話人や生活支援員の人員配置基準において常勤換算を使用します。
人員配置基準
障がい者グループホームの世話人・生活支援員の人員配置基準は次のとおりです。
世話人
常勤換算で、利用者の数を所定の数で除した人数が必要。
①介護サービス包括型・外部サービス利用型
利用者:世話人=4:1、5:1、6:1
利用者の数を4~6で除した数
②日中サービス支援型
利用者:世話人=3:1、4:1、5:1
利用者の数を3~5で除した数
生活支援員
常勤換算で、①~④の数を合計した人数が必要。
①障がい支援区分3の利用者を9で除した数
②障がい支援区分4の利用者を6で除した数
③障がい支援区分5の利用者を4で除した数
④障がい支援区分6の利用者を2.5で除した数(包括型のみ)
具体的な計算方法
今度は世話人の人員配置を例に、常勤換算の具体的な計算方法を見ていきましょう。
例:世話人の配置を6:1とする障がい者グループホーム
利用者の数が12人
常勤職員の勤務時間が8時間
非常勤職員の勤務時間が4時間
上記の障がい者グループホームで必要な世話人の人数は、次のような計算式で算出されます。
利用者÷6=常勤換算で必要な人数
→12÷6=2.0人
つまり、常勤職員のみであれば、「2人」必要になるということです。しかし、常勤・非常勤職員を半分ずつ(1.0人ずつ)にするといった場合には、それぞれ何人ずつ必要なのでしょうか。
常勤換算1.0人は、常勤職員であれば1人でOKです。一方、非常勤職員は、次のような計算で人数を算出していきます。
非常勤職員の勤務時間÷常勤職員の勤務時間=常勤換算
→4時間÷8時間=常勤換算0.5人
非常勤職員で常勤換算1.0人を満たすためには、
1.0人÷0.5人=2.0人
つまり、常勤・非常勤職員を半分ずつで常勤換算2.0人を満たすためには、「常勤職員1人と非常勤職員2人」が必要となるわけです。
令和3年度の報酬改定で変わったこと
最後に、令和3年度の報酬改定で明らかになった「常勤換算の変更点」を紹介します。
産休・育休明けの時短勤務
産休・育休明けの時短勤務は、これまで常勤換算に含めることができませんでした。しかし、令和3年度の報酬改定により、一定の条件を満たせば、常勤時間数を週30時間とすることが可能になったのです。その条件は、次の3つ。
①時短勤務について、法人の就業規則に明記されている
②常勤職員として雇用されていることが、雇用契約から分かる
③時短勤務の時間が、週30時間を下回らない
以上を満たすことによって、時短勤務でも常勤換算の人数に含めることができるようになりました。
サービス提供体制強化加算等
サービス提供体制強化加算等は、常勤職員の割合が報酬単位を左右する加算。令和3年度の報酬改定により、産休・育休、介護休業時にも、その職員を常勤職員の割合に含めることができるようになりました。
人員配置基準で「常勤」が要件の職種
障がい者グループホームにはサービス管理責任者など、人員配置基準で「常勤」の職員が必要な職種があります。しかし、令和3年度の報酬改定では「産休・育休、介護休業時には、『同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算する』ことで人員配置基準を満たすことが可能」となりました。
シフト作成上の注意点
常勤換算の理解ができたら、シフト作成時の注意点について見ていきましょう。まず、人員配置基準のおさらいです。
〇管理者 :常勤(管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可)
〇サビ管 :利用者数30人以下→1人
〇生活支援員: 障害区分3の利用者数を9で除した数
4の利用者数を6で除した数
5の利用者数を4で除した数
6の利用者数を2.5で除した数
〇世話人 :常勤換算で利用者数を6で除した数以上
障がい者グループホームのサビ管の配置基準は30対1です。そして世話人または支援員の一人は常勤でなければなりません。
例えば区分6の利用者が4人入居している場合で考えてみましょう。
サビ管の必要時間 :4÷30×40=6時間(小数点切り上げ)
生活支援員の必要時間:4÷2.5×40=64時間(小数点切り上げ)
グループホームの場合、管理者、サビ管、支援員の兼務が可能です。兼務の場合でも上記のサビ管としての時間数は確保するようにシフトを組むことに注意しましょう。
開業初年度については、最初の6カ月は「みなし規定」があります。これは定員の90%が入居しているとみなして人員配置を行うというものです。管理者、サビ管、世話人を兼務できる人が1人いる場合で、定員4名の住居の例をみてみましょう。
開業時のみなし入居者数:3,6人
サビ管 :0,2人
世話人 :0,7人
生活支援員 :区分3以上の入居者がいないとして0人
上記のようにすると、管理者と兼務なので一人で全て満たすことができます。ただし、急に体験利用などの申し入れがあった場合、夜間支援員がいないと対応できません(管理者は夜勤不可のため)。ですので、急な体験利用等の場合にもシフト対応できる夜間支援員をキープしておくと理想的です。
まとめ
障がい福祉サービスの人員配置は、常勤換算の考え方が必須です。報酬改定により、詳しい要件や計算方法が変わる可能性も十分あります。そのため、常勤換算について、シフトの組み方について、人員配置基準について不安や疑問がある方は、障がい者グループホームに強い「日本で唯一の障がい福祉専門の税理士事務所」に相談しましょう。
参考文献