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熱中症対策義務化 障がい福祉も対象?
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2025年6月1日、労働安全衛生規則が改正され、一定の業種・職場を対象に熱中症対策をとることが法律で義務づけられます。障がい福祉の現場も例外ではありません。

1. 新ルールのポイントは「早期発見と迅速対応」

改正後は、職場で熱中症が疑われる人をすぐに見つけ、すぐに助ける仕組みを整えることが必須になります。厚生労働省は次の3ステップを求めています。

ステップ 内容(かんたん説明)
体制整備 「具合が悪い」と感じた人がすぐ連絡できる担当者・電話番号を決め、掲示する
手順作成 休ませる場所、体を冷やす方法、救急搬送の手順を文書でまとめる
関係者への周知 職員だけでなく利用者や家族にも分かりやすく共有する

2. どんな作業が「対象」になる?

  • **WBGT28 ℃**以上 または **気温31 ℃**以上
  • 連続1時間以上 または1日合計4時間超の作業

この2つを両方満たす「熱中症のおそれがある作業」は、建設や製造だけでなく訪問介護の屋外支援、就労継続支援A型の施設外就労など福祉の現場でも起こり得ます。

上記の基準を満たすかどうかは、細かな作業内容や現場環境によって変わります。最終的な適用の可否は所轄の労働基準監督署(労基署)へ確認し、正式な指示を受けるようにしてください。

3. なぜ今、義務化なのか?

  • 2024年(令和6年)の職場の熱中症事故は1,257件、死亡者31人で前年より14%増。重症化まで気づかない例が多いと報告されています。

義務化の背景とねらい

1️⃣ 猛暑が「ふつう」になった

  • 日本の平均気温は100年で約1.3 °C上昇し、猛暑日の数も右肩上がり。気象庁のデータによると近年の最高気温記録はほぼ毎年塗り替えられています
  • 地球温暖化で夏が長く、暑さがより厳しくなる傾向が続くと予測されています。

2️⃣ 職場の熱中症が過去最多

  • 2024年の職場での熱中症死傷者は1,257人、死亡者31人
  • 重症化すると救急搬送・長期休業となり、医療費や労災補償など社会的コストが膨大

3️⃣ 法律で「最低ライン」を決める必要

  • 厚労省は労働安全衛生規則を改正し、「①報告体制の整備」「②応急措置の手順書」「③周知教育」を義務化。2025年6月1日(令和7年)施行です。
  • これにより“努力義務”だった熱中症対策が法令違反=罰則対象へ格上げされます。

義務化の対象となる作業条件と業種一覧

1. そもそもの「対象作業」とは?

厚生労働省の改正省令では、次の2つの環境条件+2つの作業時間条件をすべて満たす場合を「熱中症を生ずるおそれのある作業」と定義しています。

環境条件 作業時間条件
WBGT(暑さ指数)28 ℃以上 または 気温31 ℃以上 連続1時間以上 または 1日あたり4時間超

WBGTってなに?
WBGTは、単なる「気温」ではなく、

  • 気温(乾球温度)
  • 湿度(湿球温度)
  • 日差し(輻射熱/黒球温度)
  • 風の強さ(体感温度に関係)

などを組み合わせて、人間の体にどれくらい熱の負担がかかるかを数値で表したものです。

 

2. 代表的な業種と該当シーン

区分 主な該当シーン 注意ポイント
建設・土木 屋外工事、舗装・解体作業 日射が強い+作業強度が高い
製造・倉庫 高温炉前、通気の悪い倉庫 室内でも気温31 ℃超が発生
運輸・物流 荷下ろし、積み込み トラック荷台は40 ℃超になる例も
農業・林業 ハウス栽培、伐採作業 湿度が高くWBGTが上がりやすい
医療・福祉 訪問介護、就労支援の施設外就労 体温のコントロールが難しい方もいるため、慎重な暑さ対策が必要

これらはあくまでも“例”で、条件を満たせばどの業種でも対象になります。

障がい福祉事業は対象になる?判断ポイント

事業形態 該当しやすい場面 具体的な判断のめやす
訪問介護 移動介助、買い物同行など屋外支援 気温31 ℃以上の時間帯に連続1時間、または1日4時間以上屋外活動が想定されるとき
就労継続支援A型 従業員(利用者)の施設外就労 同上。屋外での軽作業でもWBGT28 ℃を超えたら注意

上記の条件に**少しでも該当する可能性があれば、熱中症対策は“努力”ではなく“義務”となります。

 

⚠️ 注意ポイント

  • 就労継続支援A型:利用者と雇用契約を結んでいるため、労働者として熱中症対策の法的義務の対象になります。
  • 就労継続支援B型:利用者は雇用関係にないため、制度上は直接の義務対象外です。ただし、福祉サービスとして自主的な対策を講じることが望まれます。

 

3. チェックリストで自己診断

  1. 屋外 or 高温多湿の屋内での支援・作業がある
  2. 気温が31 ℃以上、またはWBGTが28 ℃以上になる日が想定される
  3. その環境下で1時間連続、もしくは1日合計4時間超の作業が発生し得る

すべて YES → 法的義務の対象
1つでも NO → 原則対象外だが、突発的な猛暑日や熱波予報が出た日は同等の対策を推奨

 

企業に求められる3つの基本対策

障がい福祉事業所で熱中症対策するためには――厚労省が示す 「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」 の三本柱を具体的に固めることが最短ルートです。以下では、改正労働安全衛生規則(令和7年〔2025年〕6月1日施行)に沿った実務ポイントを、障がい福祉現場向けにかみ砕いて解説します。

1️⃣ 体制整備――“誰に報告すればいいか”を明確に

やること 福祉現場でのコツ チェック項目
熱中症予防管理者の選任 職員の中から1名(代行含む)を決め、名札や掲示で周知 □氏名・連絡先が掲示されている
報告ルートの設定 例:職員(利用者)→担当職員→管理者→119 / 受診先 □連絡先が携帯・無線など複数経路
WBGT測定体制 *訪問介護車両に携帯型WBGT計を常備* □毎時測定、記録簿に転記

ポイント
障がい者でも分かるよう、**「暑いと思ったらこの人に声をかける」**というシンプルなポスターを作ると報告遅れを防げます。

2️⃣ 手順作成――“どう助けるか”を紙に落とす

項目 最低限盛り込む内容 障がい福祉向けの具体例
休憩ルール WBGT28 ℃超で20分ごとに水分補給/60分ごとに10分休憩 外出前に休憩・給水ポイント(日陰ベンチや冷房施設)を事前に確認
応急処置 首・わき・足の付け根を氷で冷却/意識確認/119番 クーラーバッグに氷嚢+経口補水液を常備
搬送手順 ①誰が119番 ②誰が家族へ連絡 ③引率者が同行 施設外就労現場の地図を「手順書」末尾に添付
記録・報告 発症時間・WBGT値・処置内容を所定様式へ記入 簡単な報告書を事前に用意し、誰でもすぐに記入できる体制を整える

ワンポイント豆知識
厚労省通知は**「紙で残す」**ことを推奨。PDF保存だけでは不十分になるケースがあるため、印刷→現場ファイル管理で監査対応も万全です。

3️⃣ 職員への周知――“みんなが知っている”状態に

目的

具体策

運用ポイント

① 必須情報の共有

– WBGT計測値のリアルタイム表示(ホワイトボード・チャット等)

目に触れる場所に常設

② 行動ルールの定着

– 年1回以上の集合研修

未受講者をリマインド

 

4️⃣ 罰則・リスクを数字で把握

  • 労働安全衛生法第119条6か月以下の懲役 または 50万円以下の罰金
  • SNS炎上による信頼失墜は利用者減少→売上減に直結。

まとめ──福祉現場から熱中症をなくすために

  • 体制整備= “誰に” 報告し “誰が” 指示するかを見える化
  • 手順作成= 休憩・応急処置・搬送・記録を1枚の手順書に凝縮
  • 関係者への周知= 文字+図解で “誰でも理解” をゴールに

具体的な体制整備・手順作成・周知の具体策のアドバイスは、弊所社労士へお気軽にご相談ください。

 

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