放課後等デイサービス(放デイ)は、就学児に対して支援を提供する障がい福祉サービスです。近年は新規参入者が多い一方で、職場内の教育や人員確保が不十分などの理由から、さまざまな不正や事故が多くなっています。
実際、令和6年度でも事業者が暴行罪で起訴・有罪判決になる例がありました。そこで今回は放課後等デイサービスの裁判について、最新の判例における経緯と判決を紹介します。
放課後等デイサービス内の虐待をめぐる裁判の概要
放課後等デイサービスの虐待をめぐる裁判の概要は、以下のとおりです。
経緯
大阪にある放デイ事業所は、法人の代表が管理責任者である兄とともに運営していました。しかし、令和5年に利用者2人への暴行が発覚します。代表と管理責任者が暴行にいたった理由は、「子どもから物を投げられるなどがあり、腹を立てた」としています。
判決
令和6年9月、大阪地裁では懲役1年2か月、執行猶予3年を言い渡しました。この判決の理由として、以下を挙げています。
- 利用者の言動は障がい特性によるものだった
- 放デイ事業所の代表なら特性を理解したうえで対応すべきだった
- 短期間に暴行を繰り返し、常習的で悪質だった
前歴がなく反省の意を示していることから執行猶予が設けられましたが、常習性や社会的な影響を踏まえて起訴・有罪判決となった例となっています。
同事業所では業務上過失致死罪も
同事業所では令和4年、送迎後に利用者が亡くなる事故も起きています。送迎者から飛び出した利用者が行方不明になり、その後川で死亡しているのが発見されたのです。
このとき同事業所の送迎では、通常2人の従業者で対応すべき送迎業務を1人で行っていました。さらに、両親に対して「散歩中に事故が起きた」など、うその説明をしていたとのことです。
本件は運転手に対して略式命令(罰金50万円)が下され、管理責任者は安全管理を怠ったとして業務上過失罪に問われています。
放課後等デイサービスで定めるべき運営マニュアル
厚生労働省によると、令和元年度における放デイの指定取り消しは23か所と、全障がい福祉サービスの中でもっとも多くなっています。指定取り消しにならないためには、今回紹介した判例にかかわる内容以外にも、下記のようなマニュアルの整備や周知徹底が大切です。
- 虐待防止
- 身体拘束防止
- 事業継続計画(BCP)
- 感染対策
- 緊急時対応
- 送迎関連 など
とくに、虐待防止や身体拘束防止などは近年義務化が進み、事業者の理解と従業者への指導が必須となっています。利用者の安全を守り、施設内での時間を安心して過ごせるよう、健全な施設運営を心がけましょう。
まとめ
放デイは「儲かる」という理由から参入者が後を絶たない状況ですが、開業するからには相応のノウハウと倫理観を持った運営が必須です。開業準備や運営でお悩みの方は、放課後等デイサービスに強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献
NHK|放課後デイ代表に懲役1年2か月 執行猶予3年判決 大阪地裁