事業所における身体拘束はやむをえない理由がない限り、廃止するよう国が定めています。しかし、適正な事業運営がなされていないところでは、従業員の都合で安易に拘束するケースも少なくありません。そこで設けられたのが、身体拘束廃止未実施減算です。
今回は同減算の適用条件や令和6年度の報酬改定を踏まえた減算率のほか、事業者が把握しておきたい注意点も紹介します。
生活介護の身体拘束廃止未実施減算とは?
同減算の適用条件と減算率は、それぞれ以下のとおりです。
適用条件
いずれか1つでも満たさない場合は、減算の対象となります。
- (身体拘束などを行う場合)必要事項の記録
- 適正化に向けた指針の整備
- 適正化に向けた委員会の開催と、従業員への周知徹底
- 適正化に向けた研修の実施
※3.と4.は少なくとも1年に1回以上(年度ではなく、直近1年)
なお、身体拘束などを行う場合に記録する内容は、主に以下のとおりです。
- 利用者の心身状況
- やむをえない理由
- 拘束方法
- 拘束時間 など
身体拘束実施の有無にかかわらず、事業者は改めて要件を確認し、対応の抜け漏れがないかを確認しましょう。
減算率
同減算の減算率は、令和6年度の報酬改定で下表のように見直されました。
障がい者支援施設内の生活介護 | 通所型の生活介護 | |
改定前 | 5単位/日 | 5単位/日 |
改定後 | 90%/日(マイナス10%/日) | 99%/日(マイナス1%/日) |
たとえば、通所型の生活介護であれば、基本報酬が500単位以上になると従来よりも減算額が増える計算になります。基本報酬も令和6年度の報酬改定で大きく変わったため、不安がある場合は税理士などの専門家へ早めに相談しましょう。
生活介護の身体拘束廃止未実施減算における注意点
同減算が適用されるのは、条件を満たさない事実が発生した月の翌月です。また、適用が終了するのは、改善が認められた月になります。
なお、同減算が適用される事案が発生した場合は、改善計画を速やかに管轄の行政庁へ提出する必要があります。
事案発生から3か月後には計画にもとづいた報告書を提出し、改善が認められれば同減算の適用は終了です。減算終了後は再発防止につとめ、適正な事業運営を心がけましょう。
まとめ
身体拘束廃止未実施減算は、重度障がい者の受け入れが進む生活介護において、頭を悩ませる機会が多い減算の1つです。運営や経営でお悩みの方は、生活介護に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献