生活介護をはじめとする障がい福祉サービスでは、時おり利用者に対する虐待がニュースになります。国は令和4年度より虐待防止措置を義務化していましたが、令和6年度の報酬改定ではさらに一歩踏み込んだ対策を講じました。
それが、「虐待防止措置未実施減算」の創設です。今回は、同減算の適用条件や減算率等を紹介します。
生活介護の虐待防止措置未実施減算とは?
同減算の適用条件と減算率は、それぞれ以下のとおりです。
適用条件
同減算がは、以下のいずれか1つでも実施されてない場合に適用されます。
- 虐待防止に向けた委員会の実施
- 虐待防止向けた従業員研修の開催
- 虐待防止対策に関する責任者の設置
※1.と2.は1年に1回以上(年度ではなく、直近1年)
なお、以下は必須ではないものの、遂行が望ましいとされている事項です。
- 外部の第三者や専門家へ、意見や助言を求める
- 管理者や当該対策の責任者が、都道府県等の虐待防止研修を受講する
虐待防止措置を適切に実施するためにも、事業者が先陣となり、透明性の確保や関連知識の習得を図っていきましょう。
減算率
同減算の減算率は「基本報酬の99%」、つまりマイナス1%となります。一見すると微々たる減算に見えますが、利用者全員分の基本報酬から差し引かれると考えると、いわゆる「塵も積もれば山となる」です。
なお、同減算の適用期間は、事案が発生した翌月から改善が認められた月までです。たとえば、以下の条件で減算が発生した場合にどれほど減額されるかシミュレーションしてみましょう。
- 利用定員:20名(計算しやすいよう、すべて区分4とする)
- 利用回数:3回/週、12回/月
- 基本報酬:584単位(7時間以上8時間未満)
- 減算の適用期間:3か月
【従来の基本報酬】
報酬単価×人数×回数×地域区分(10円)
=584単位×20名×12回×3か月×10円
=4,204,800円
【減算適用】
基本報酬×99%
=4,204,800円×0.99
=4,162,752円
つまり、4万円ほどの差額が発生します。適用期間がさらに長引けば、この限りではありません。
また、減額以上に痛手になるのは、「虐待防止措置をきちんと実行していない」という信頼感の喪失です。利用率の低下はもちろん、従業員の離職による運営状況の悪化も引き起こされかねないため、十分留意しながら対応にあたっていきましょう。
まとめ
生活介護の虐待防止措置未実施減算は、令和6年度の報酬改定で新設されました。開業者はもちろん、現在運営している事業者も改めて内容を確認しましょう。
経営や運営の立て直しでお悩みの方は、生活介護に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献