インボイス制度の開始は世間を大きく騒がせており、「仕事がなくなるかも」と不安になる企業・従業員も多いでしょう。
それは、就労継続支援でも同様です。事業者やこれから開業を予定している方は、「実際にどのような影響があるのか」と疑問に思う方も少なくありません。そこで今回は就労継続支援とインボイス制度について、影響の有無や必要な対応について紹介します。
就労継続支援に対するインボイス制度の影響
インボイス制度とは、消費税を公平に算出・伝達するために設けられた制度です。影響の有無は、課税仕入れが発生するか否かで変わってきます。ここでは、「事業所・取引先間」「事業所・利用者間」の2つに分けて影響の有無を見ていきましょう。
事業所・取引先間での影響
事業所・取引先間では、インボイス制度の影響は多少あります。請負や販売をはじめとした生産活動の売上は、課税仕入れに該当するためです。事業の一環として、企業向けの物販や不動産賃貸などを行っている場合も同様です。
いずれにおいても、取引先によっては「インボイス発行事業者に登録しないと、取引継続は難しい」と判断するところが出てくる可能性があります。
事業所・利用者間での影響
事業所・利用者間では、インボイス制度の影響はありません。就労継続支援A型の賃金や就労継続支援B型の工賃は、課税仕入れに該当しないためです。
就労継続支援B型と利用者の契約は、外注や委任と異なります。また、生産活動で発生した売上の余剰金が分配されるため、課税仕入れには該当しません。
就労継続支援A型の賃金は、通常の給与と同様に労働の対価として支払うため、課税仕入れには該当しないことになっています。
就労継続支援ができるインボイス制度への対応
就労継続支援ができるインボイス制度への対応は、主に以下の3つです。
インボイス制度への登録可否を検討する
取引先の維持・拡大を重視したい場合は、インボイス制度へ登録しましょう。課税売上が1,000万円以下の免税事業者でも、2029年9月30日までにインボイスの登録申請書を税務署へ提出すれば、インボイスを発行できる課税事業者になれます。
ただし、インボイス制度は多くの反対の声を押し切って開始された経緯もあり、今後の動きは不透明です。世間の動きや反応を見てから登録可否を判断しても、遅くはないでしょう。
書類を整備する
インボイス制度に登録すると決まったら、請求書などのフォーマットを変えましょう。記載事項として定められているのは、以下の項目です。
- インボイス発行事業者の氏名または名称
- 登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 適用税率
- 消費税など
- 交付を受ける事業者の氏名または名称
適格請求書は7年間の保存が必要なため、保管体制の整備も必要になります。
専門の税理士へ相談する
登録の可否や書類の整備など、事業者だけでは判断が難しい場面も少なくありません。不安や疑問がある場合は、専門の税理士へ相談するのがおすすめです。
場合によっては簡易課税の選択や分社化によって、大幅な節税ができる可能性もあります。制度の変遷に左右されない安定した事業運営を実現したい方は、専門税理士へ相談しましょう。
まとめ
就労継続支援におけるインボイス制度への対応要否は、展開する事業の種類や課税売上などによって異なります。登録の可否などについてお悩みの方は、インボイス制度にも強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献
国税庁|消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A