近年、障がい者相談支援事業に対する課税・非課税について、市町村間で認識に差異があることがわかりました。
結論から言うと、障がい者相談支援事業は消費税の課税対象です。この旨は令和5年10月に通達が発出され、令和6年4月には国税庁と厚生労働省の共催による説明会が行われました。
そこで今回は障がい者相談支援事業が消費税の課税対象になる理由や委託料への影響はもちろん、よくある質問への回答も紹介します。
障がい者相談支援事業が消費税の課税対象である理由
社会福祉事業に該当する場合、消費税は非課税になります。しかし、障がい者相談支援事業は社会福祉事業に該当しません。
さらに詳しく言うと、社会福祉法第2条第2項や第3項の各号いずれにも該当しない事業です。また、消費税関係法令でも、非課税とする旨の規定がないため、課税対象となっています。
なお、以下の事業も同様の理由から消費税の課税対象です。
- 住宅入居等支援事業
- 基幹相談支援センターの運営事業
- 障がい児等療育支援事業
- 発達障がい者支援センターの運営事業
- 高次脳機能障がいや関連障がいに対する支援普及事業
- 医療的ケア児支援センターの運営事業
運営する事業に対する課税・非課税について不安がある場合は、厚生労働省あるいはこども家庭庁へ確認しましょう。
障がい者相談支援事業の委託料に対する消費税の影響
自治体が民間事業者に支払う委託料も、消費税の課税・非課税によって金額が異なってきます。障がい者相談支援事業は課税対象であるため、消費税相当額を加えた金額を受託者に支払うことが必要です。
これまで非課税扱いで委託料を支払っていた市町村は、所轄税務署に相談したうえで相当額を算出するなど適切な対応が求められます。
障がい者相談支援事業の消費税に関するよくある質問
同事業の消費税に関するよくある質問は、以下の3つです。
委託料に消費税を含めていなかった場合の対応は?
誤認のもと申告が不十分だった場合は、修正申告が必要です。なお、「基準期間または特定期間(※)」における課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税の課税事業者となります。
修正申告の手続きなどで疑問点がある場合は、所轄の税務署へ早めに相談するとよいでしょう。
※前々事業年度、または前事業年度の開始日以後6か月
修正申告で発生した加算税や延滞税に免除制度はある?
以下のように正当な理由があると認められた場合は、加算税や延滞税は課されません。
- 納税者から十分な資料の提出があった
- 税務職員が誤った指導を行った
- 納税者が税務職員を信頼して指導に従った
ただし、市町村が自らの判断で誤った指導を行い、納税者がその指示に従った場合は例外です。この場合は市町村が消費税法を解釈適用する行政機関ではなく、過失がないとは言えないことから、加算税や延滞税の免除は難しいとされています。
消費税の一括納付が難しい場合の対応は?
税務署や国税局へ申請することで、分割納付が認められる可能性があります。ただし、その期間は原則1年以内です。
一括納付が難しいと予測される場合は、所轄の税務署へ早めに相談しましょう。
まとめ
障がい者相談支援事業は消費税の課税対象であることが、改めて明確に示されました。経理処理や経営でお悩みの方は、「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献