居宅介護は基本的に、利用者の自宅へ訪問したうえでサービスを提供します。しかし、利用者の在住地域によっては、訪問に時間や費用がかかるケースも少なくありません。そのような場合の補てんとして設けられているのが、特別地域加算です。
そこで今回は居宅介護の特別地域加算について、算定要件や報酬単価のほか、他事業所における算定状況を紹介します。
居宅介護の特別地域加算とは?
同加算の算定要件と報酬単価は、それぞれ以下のとおりです。
算定要件
同加算は特定の地域に住んでいる利用者へ、居宅介護を提供した場合に算定できます。対象となる地域は、以下に挙げるいずれかの法律に定められているところです。
法律 | 具体的な地域 |
離島振興法 | 国土交通省のページを参照 |
豪雪地帯対策特別措置法 | 国土交通省のページを参照 |
山村振興法 | 農林水産省のページを参照 |
沖縄振興特別措置法 | 沖縄県のページを参照 |
奄美群島振興開発特別措置法 | ・奄美群島
・鹿児島県奄美市 ・鹿児島県大島郡 |
小笠原諸島振興開発特別措置法 | 小笠原諸島 |
たとえば、大阪府では過疎地域における特別地域加算として、以下の地域を定めています(令和4年4月1日時点)。
- 豊能町
- 能勢町
- 岬町
- 千早赤阪村
事業所の利用者が対象となるか不明な場合は、各市町村へ確認しましょう。
報酬単価
居宅介護の特別地域加算では、基本報酬の15%が上乗せされます。たとえば、以下の条件ではどの程度の差額が出るか、計算してみましょう。
- 利用サービス:家事援助
- 1回あたりの時間:45分以上1時間未満(=197単位)
- 1か月の利用回数:12回(週3回程度)
【従来の基本報酬】
報酬単価×回数×地域区分(10円)
=197単位×12回×10円
=23,640円
【特別地域加算】
基本報酬×15%
=23,640円×0.15
=3,546円
つまり、合算すると約27,000円の基本報酬となります。とくに、特別地域に定められている地域の利用者がいる場合は必ず算定し、移動経費などへ充てたいところです。
居宅介護における特別地域加算の算定状況
日本知的障がい者福祉協会の実態調査によると、同加算の算定状況は下表のようになっています。
事業所数 | 割合 | |
算定している | 68か所 | 39.3% |
算定していない | 100か所 | 57.8% |
無回答 | 5か所 | 2.9% |
合計 | 173か所 | 100% |
障がい者の地域移行が推進されていることもあり、算定している事業所は約4割とやや多めです。
なお、算定している事業所では、対象利用者数が「20名以上」の割合が25.0%ともっとも高く、次点が「5名〜9名」で17.6%、「1名」が14.7%となっています。
まとめ
居宅介護は対象者が幅広く、訪問先が多方面にわたるため、特別地域加算を算定するケースが比較的多い障がい福祉サービスです。加算の算定や経営でお悩みの方は、居宅介護に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献
日本知的障がい者福祉協会|令和2年度居宅介護事業等サービス実態調査報告