処遇改善加算は関連する加算が複数あるうえ、それぞれ算定要件が異なるため、忌避する事業者が少なくありません。そこで、令和6年度の報酬改定では、同加算が大きく見直されました。
今回は福祉・介護職員等処遇改善加算の基礎知識を振り返りながら、令和6年度の報酬改定における変更点を紹介します。
福祉・介護職員等処遇改善加算とは?
同加算は、障がい福祉サービスに従事する職員の賃金改善に向けて、平成24年に創設されたものです。令和5年度までは以下の3つがあり、それぞれ要件や加算率が異なっていました。
- 福祉・介護職員等処遇改善加算
- 福祉・介護職員等特定処遇改善加算
- 福祉・介護職員等ベースアップ等加算
しかし、算定率が低めで、かつ賃金への還元が少ないという課題がありました。そこで令和6年度の報酬改定では、より多くの事業所で同加算を算定できるよう、大きく見直されています。
【令和6年度】福祉・介護職員等処遇改善加算の変更点
福祉・介護職員等処遇改善加算が令和6年度の報酬改定で見直された点は、主に以下の3つです。各事項についてより詳しく知りたい方は、厚生労働省の事業者向けリーフレットもあわせてチェックしてみてください。
算定要件の再編と統合
令和6年度の報酬改定では、3つの処遇改善加算が一本化されました。5つの新加算に統合され、それぞれの算定要件も下表のようにまとめられています。
キャリアパス要件 | 月額賃金改善要件 | 職場環境等要件 | |
新加算Ⅰ | Ⅰ~Ⅴすべて | Ⅰ:令和7年度から適用
Ⅱ:現行ベア加算見算定の場合のみ適用 |
・6の区分ごとにそれぞれ2つ以上取り組む
・取組内容を公表する |
新加算Ⅱ | Ⅰ~Ⅳ | ||
新加算Ⅲ | Ⅰ~Ⅲ | 6の区分ごとにそれぞれ1つ以上取り組む | |
新加算Ⅳ | Ⅰ~Ⅱ | ||
新加算Ⅴ※ | — | — | — |
※激変緩和措置:令和6年6月~令和6年度末まで
加算率の引き上げ
令和6年5月まで続く旧加算では、加算率が1.8%~6.9%でした。しかし、令和6年6月からの新加算では、下表のように全体的に加算率が引き上げられます。
【生活介護の例】
加算率 | |
新加算Ⅰ | 8.1% |
新加算Ⅱ | 8.0% |
新加算Ⅲ | 6.7% |
新加算Ⅳ | 5.5% |
新加算Ⅴ(1)~(14) | 7.0%~3.0% |
職種間配分ルールの緩和
3つの処遇改善加算が統合された新加算では、福祉・介護職員への配分を基本とする点は変わらないものの、事業所内で柔軟な配分を認めることになりました。また、以下の職種も配分対象として加わっています。
- 就労定着支援の就労定着支援員
- 自立生活援助の地域生活支援員
- 就労選択支援の就労選択支援員
同加算を上手に活用し、事業所全体の賃金改善を図っていきましょう。
まとめ
福祉・介護職員等処遇改善加算は令和6年度の報酬改定で、より算定しやすく、かつ現場へ還元しやすい加算へ進化しました。加算の算定や賃金改善でお悩みの方は、生活介護に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へお早めに相談することをオススメします。
参考文献