障がい者が一般就労するケースが増加し、令和元年度には移行者数が2万人以上となりました。一見すると順風満帆な就労移行支援ですが、実は現状においてさまざまな問題点を抱えています。
事業者は利用者数の維持・向上のためにも、この課題を把握し改善に努めることが大切です。そこで今回は就労移行支援の問題点や、事業所ができる工夫について紹介します。
就労移行支援の現状における問題点とは?
現状、就労移行支援の問題点として挙げられるのは次の3つです。
移行実績の低い事業所が一定数存在している
一般就労者は増えているものの、移行実績が低い事業所はまだ一定数あります。そもそも、就労系サービスから一般就労している方の割合は、下表のとおりです。
平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | |
就労移行支援 | 48.3% | 52.9% | 54.7% |
就労継続支援A型 | 23.3% | 22.7% | 25.1% |
就労継続支援B型 | 11.4% | 11.7% | 13.2% |
就労移行支援は比較的移行率が高いものの、逆に言えば約半数の方が一般就労できていないともいます。なかには事業ビジョンをきちんと定めず、就労継続支援に付属して「とりあえず併設してみよう」と安易な参入により、成果を出せずにいる事業所も少なくありません。
アセスメントや支援の質が確保されていない
就労移行支援に関連するアセスメントシートはさまざま開発されていますが、実践的に扱える職員はまだ少ない状況です。そもそも就労移行支援に携わる人材が不足しており、支援スキル向上を図る機会も少なくなっています。
結果、アセスメントや支援の質が確保されず、利用者満足度が低い事業所も少なくないのです。
一般就労への移行後に離職してしまう利用者が多い
実態調査によると移行1年後の就労定着率は58.4%と、約4割の方は離職している結果になっています。主な離職理由は、職場環境の不適応や対人関係のトラブルです。
利用者の中には発達障がいなどの特性により、コミュニケーションがうまく取れない方も少なくありません。就労移行支援から雇用側への情報提供やサポートが不十分だと、特性を十分に理解できずトラブルが発生しやすくなります。
その結果、利用者の自信や自尊心が低下し、離職につながってしまうのです。
就労移行支援の問題点を解決するために必要なこと
前述した問題点を解決するためには、効果的で切れ目のない専門的支援体制の構築が重要です。具体的には、次のような取り組みを進めます。
- 共有し利活用できる評価:就労能力や適性の評価、就労支援プランの共有化
- 就労支援人材の育成 :雇用・福祉の統一的なカリキュラム作成や共通の人材育成
- 職場支援の充実: 雇用と福祉の連携、就労定着支援など役割分担の明確化
事業所間の連携や情報交換も密に行い、サービス全体の質向上を目指しましょう。
まとめ
就労移行支援の問題点は就労に携わる人材やスキルの不足、就労定着サポートの不十分さにあります。利用者満足度の高い運営や経営でお悩みの方は、就労移行支援に強い「障がい福祉専門の税理士事務所」へ早めに相談しましょう。
参考文献